チェック教材
各項目が備わっているかどうか確認するための課題です。また、課題をこなすことで実際に必要な力を身につけていくことができます。
3.言語教育(7‐11)
コミュニケーションのための日本語教育を実施するために必要な力を備えているか、確認し、学んでいきましょう。
7.発音の学習をデザインできる
課題1 説明できますか。
日本語の発音・音声の特徴について以下の観点から説明してください。
1)母音と子音
2)アクセント
3)リズム
学び方のポイント
発音の指導をするには、まず、日本語の発音の特徴を知る必要があります。日本語以外の言語を一つ取り上げ、比較しながら違いを考えてみましょう。日本語の音声の参考書等で調べるだけでなく、日本語母語話者による日本語の発音、非母語話者による日本語の発音を聞き比べて問題点を見つけてみることも大切です。
課題2 考えてみましょう。
1)日本語の学習者が「発音がよくない」と判断されるのはどのような場合でしょうか。またその原因は何でしょうか。
2)発音の問題のために意思疎通に支障が生じるのはどのような場合でしょうか。
学び方のポイント
発音の難しさは学習者の母語によって異なります。また、聞く側の慣れ・不慣れにも影響を受けます。具体的な例をもとに考えてみましょう。
課題3 考えてみましょう。
1)外国語教育で使われている発音指導にはどのような方法がありますか。
2)日本人が音声言語を改善するために行うトレーニングにはどのようなものがありますか。
学び方のポイント
自然な発音は、口やその周辺の筋肉運動、呼吸法、さらに全身の動きによって生み出されます。さまざまな指導方法、練習方法を把握しておくと、学習者の課題に合わせて、指導計画を立てることができます。
課題4 やってみましょう。
次の学習者に対する発音指導を計画し、教材を作ってみましょう。
1)ベトナム語母語話者で、初級レベルを学習中。「たちつてと、ざじずぜぞ、だでど、やゆよ、らりるれろ」に母語の影響が強く残り、聞き取りにくい。
2)中国語母語話者で、N1に合格しており、書く日本語にもほとんど誤りはみられないが、話す日本語は聞き取りにくい発音が多い。
8.語彙の学習をデザインできる
課題1 説明できますか。
次の用語の違いについて、具体例を挙げて説明してください。
1)使用語彙と理解語彙
2)一般語彙と専門語彙
3)漢語と和語
4)複合語と派生語
学び方のポイント
語彙の学習をデザインするには、学び方の段階性について考える必要があります。しかし、学習ニーズを重視する場合は、初級語彙、中級語彙といった日本語教育の一般的な分類にとらわれず、優先順位、学びやすさを工夫する必要があります。そのためには1)~4)のような様々な観点から日本語の語彙の特徴や使われ方を把握しておく必要があります。
課題2 考えてみましょう。
母語あるいは外国語の学習で、自分の語彙力が伸びたと感じた経験があれば、そのプロセスを振り返り課題1で挙げた用語を使って説明してください。
学び方のポイント
語彙学習は時間がかかります。自分経験を振り返り、言語化してみましょう。ほかの人と経験談を分かち合うのもよい方法です。学習者を多様な視点から支援できるようになります。
課題3 やってみましょう。
次の学習者に対する語彙の学習を計画してください。
1)日本語未習で来日し、日本語学習と同時に日本での生活を開始するカナダ人の英語教師
2)海外採用で日本のIT企業に就職し、ソフトウエア開発に関するやりとりを日本語で行う必要のあるインド人のIT技術者。
学び方のポイント
日本での生活や職務など日本語で活動に参加するためには、その分野で頻繁に使われている語彙から学習を始めることが効率的です。学習者の状況や具体的なニーズから、学びやすい計画を立ててみましょう。
9.表現や談話展開の学習をデザインできる
課題1 考えてみましょう。
コミュニケーション力と文法学習の関係を考えてください。
1)初級教科書で文法学習を終えたが、コミュニケーションができないということがよく問題になります。理由はなんでしょうか。
2)コミュニケーション力とはどのようにつけていけばよいと思いますか。
*日本語教育における文法学習についての知識や経験があまりない場合は、『みんなの日本語』など初級の文型積み上げ式と言われる教科書で
学習方法、指導方法について把握してください。
学び方のポイント
日本語教師の初心者は、授業で文法・文型を適切に指導できるようになることを重視しがちです。文法・文型の規則や意味は教科書に示されており、その多くは学習者のために説明が英語や多言語で訳されています。
コミュニケーション力をつけるためには、文法・文型の積み上げ式とは違った視点での指導が必要です。
課題2 考えてみましょう。
語彙や文に対して「表現」とはどのようなものか理解を深め、以下について考えてください。
1)日常的な社交場面でよく使われる「表現」にはどのようなものがあるでしょうか。
2)実際の場面で「表現」を適切に使えるようになるにはどのような学習方法があるでしょうか。
学び方のポイント
ある状況で、あるいは話題についてコミュニケーションをする場合、適切な表現が使えるとやりとりを円滑にします。学習者が適切な表現が使えるようになるためにどのような支援が可能か考えてみましょう。
課題3 考えてみましょう。
談話展開について理解を深め、以下について考えてください。
1)談話展開の例を見つけてください。
2)日本語の談話展開の特徴について、事例を通して考えてください。
学び方のポイント
文法が正確でも、談話展開が不自然だとコミュニケーションが円滑に進まない場合があります。学習者が談話展開の特徴に気づき、あるいは工夫して円滑にコミュニケーションができるようになるにはどのような支援が可能か考えてみましょう。
10.評価方法及び基準を選定できる
課題1 説明できますか。
日本語教育における初級,中級,上級というレベルの捉え方とコミュニケーション力の関係について説明してください。
学び方のポイント
初級、中級、上級は、「初級の教科書」、「中級表現文型」、「上級読解問題」のように使われますが、それぞれどのような内容を指しているのでしょうか。また、それらと学習者が目指すコミュニケーション力とはどのような関係があるのでしょうか。コミュニケーション力をつけるための指導ができるようになるためには、文構造の面から捉えたレベルとは違った観点が必要です。
課題2 説明できますか。
次のテスト及び評価方法の目的とコミュニケーション力との関係を説明してください。
1)日本語能力試験
2)OPI(Oral proficiency Interview)
3)ビジネス日本語能力試験(BJT)
4)ポートフォリオ評価
学び方のポイント
日本語教育や外国語教育では様々なテストが開発、実施されています。それぞれについて理解を深め、コミュニケーション教育としての日本語教育では、それぞれをどのように位置づければよいか整理しておきましょう。
課題3 説明できますか。
CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)について理解を深め、判定の記述として参照できるように把握してください。
1)CEFRの理念、作成目的、概要を説明してください。
2)学習経験のある外国語力について、CEFR を用いてレベルを説明してください。
学び方のポイント
CEFRは学習者がその言語を使ってどのような社会的活動が可能かということを判定できるように作成された参照枠です。この参照枠を活用して、担当するコース等の日本語力判定ができるように内容を把握し使い方に対する理解を深めましょう。
11.学習者の日本語力を判定できる
課題1 考えてみましょう。
コース開始時のレベルチェックの方法を考えてください。
1)レベルチェックの目的は何ですか。
2)何をチェックしますか。
3)どのような方法でチェックしますか。
学び方のポイント
コース開始前に多くの人数のレベルチェックをする場合、無駄な時間やコストがかからないようにする必要があります。そのためには、レベルチェックの目的、内容、方法を適切に計画できる力が求められます。
課題2 やってみましょう。
レベルチェックをしてみましょう。
1)周囲の日本語非母語話者の協力を得て、レベルチェックを計画、実施してみましょう。
2)レベルを判定し、結果の報告を書いてみましょう。
3)同じ作業をほかの人にもしてもらって結果を比較して話しあってみましょう。
学び方のポイント
話す力、書く力、タスクの達成度等は、判定基準が揺れることも多く、複数の人がほぼ同様に判定できるシステムを作り、それぞれが判定できるように経験を積む必要があります。あまり経験がない場合は、CEFR、OPIなどの判定基準、方法を参考に実際に判定してみること、それを人に伝えるための報告を書いてみることが大切です。