5.コースデザイン
SJ(就労者に対する日本語教育)指導者には、事例毎に最適なコースデザインをする力が求められます。そのためには、調査、計画、実施の具体的な方法、さらに有効なリソースに関して幅広い知識を持ち、コースデザインの経験を積み重ねていく必要があります。
そのような力を備えているかどうか、確認してください。
SJ指導者Can-do statementsでは「理解できる」「把握している」「できる」は次のような意味で使っています。
《理解できる》
その項目に関する新規の情報を読んで概要を理解できる程度の知識がある
《把握している》
SJ指導者としての活動を計画、実施する上で前提となる知識がある
《できる》
SJ指導者として十全にできる
18.日本語教育・研修のニーズ分析ができる
□ 18.1 ニーズ収集の対象を把握している
□ 18.2 ニーズ調査のため学習者や企業サイド(就職支援も含む関係者)と適切な意思疎通ができる
□ 18.3 質問項目を抽出し、質問票を作成できる
□ 18.4 質問票やインタビューによるニーズ調査やレディネス調査ができる
□ 18.5 得られた内容をもとに適切にニーズ分析ができる
SJ指導者には、適切にニーズ分析ができる力が求められます。ニーズに関する情報はどこからどのように得ることができるのか、効率よくニーズを収集・分析するのはどのような方法があるのか等について知っておきましょう。
19.ニーズ分析に基づいて、日本語教育・研修の目標設定ができる
□ 19.1 コースの目標を設定することができる
□ 19.2 コースの目標をCan-do statementsとして記述することができる
ニーズ分析の結果に基づいたコースデザインをするためには、分析結果から目標設定をする必要があります。
20.日本語教育・研修の実施計画をたてることができる
□ 20.1 設定された目標に伴い、具体的な学習項目を選定できる
□ 20.2 設定された目標に合わせて言語教育分野の必要要件を盛り込むことができる
□ 20.3 企業の要望に対して適切な判断ができる
□ 20.4 研修計画書を作成することができる
目標を達成できるよう、具体的な学習項目を研修の諸条件(期間・クラス数・予算等)と照らし合わせながら、必要であれば企業側と交渉しつつ具体的な実施計画をたてていくことになります。最終的な計画書は、企業に提出することを意識して作成する必要があります。
21.コースの概要を関係者にわかるように説明できる
□ 21.1 日本語教育が専門ではない人にも研修計画をわかりやすく説明できる
□ 21.2 コースの概要を図解できる
SJ指導者は、コースの概要は、コースに関わる全ての関係者にわかるように説明する力が求められます。学習者、企業担当者、コースで教える教師など立場や役割の異なる関係者と相互に報告、連絡、相談ができるようにするには、単に学習内容やスケジュールだけでなく、どのような考えに基づいてコースを進めていくのか、共有しておく必要があるからです。
22.就職支援のコースデザインができる
□ 22.1 仕事とは何かを考える方法を学習者集団に応じてコースに盛り込むことができる
□ 22.2 就職のための情報収集方法の指導ができる
□ 22.3 就職活動のしくみや仕事の条件に関する内容をコースに盛り込むことができる
□ 22.4 エントリーシート、履歴書、職務経歴書の作成指導ができる
就職支援は、これから就職する学習者に対する日本語教育です。就職活動と向き合うためには、エントリーシートや面接といった就活プロセスで必要な行動だけでなく、情報収集の方法も含めたコースデザインが必要です。
23.企業研修のコースデザインができる
□ 23.1 日本語研修の位置づけ(新入社員、中途採用、配属前、配属後等)を把握している
□ 23.2 企業の社員研修(OJTも含む)の概要を理解でき、必要な情報を収集ができる
□ 23.3 学習者の業務内容に合わせて、学習項目の取捨選択、優先順位付けができる。
□ 23.4 学習者の職務に求められるコミュニケーションの特徴を把握できる
企業研修として行われる日本語研修のコースデザインをする場合は、当該企業の人材育成計画(キャリアプラン、前後または平行して行われる社内研修等)との関係を考慮してデザインする必要があります。日本企業における一般的なキャリアプラン、既存の研修の情報を得て、適切なコースデザインをするための素地を備えておきましょう。
24.個人の学習者の職務に特化したコースデザインができる
□ 24.1 学習者の担当職務に関して、学習者個人のコミュニケーション上(言語知識を含む)の問題点と職務遂行力との関係を把握している
□ 24.2 担当職務に求められるコミュニケーション力の向上策について、学習者と適切な意思疎通を図りながら、学習方法等について助言ができる
□ 24.3 学習者のコミュニケーション上での課題や改善状況・改善見込みについて、企業側の関係者と適切に意思疎通ができ、助言ができる
企業研修は個人授業として行われる場合があります。また、グループによる研修から取り出す形で特別な研修が行われる場合もあります。そのような場合には、短時間で適切かつ効果的な指導力が求められます。
25.ビジネススキルに特化したコースデザインができる
□ 25.1 接客、営業、開発など、個別の職務に求められるコミュニケーションの特徴を把握している
□ 25.2 個別の職務、業種が扱うコミュニケーションの概要を理解し、必要に応じて情報を収集することができる
□ 25.3 個別の職務、業種のビジネススキルに特化したコースの内容を理解している
ビジネススキルとは、メールの書き方、プレゼンテーションと言った働く時に求められる実用的なスキルを指します。これらは、日本人社員も研修や実務を通して身につけていきます。外国人の場合も別建てにして学ぶのではなく、本来、当該企業の社員あるいはプロフェッショナルとして学ぶのが理想です。しかし、外国人学習者はビジネススキル研修を受ける機会がない場合も少なくありません。
日本語、及び日本語によるコミュニケーションに不慣れな部分を効率よくサポートしていくことが必要です。